ハリウッドVFX業界就職の手引き

ハリウッドVFX業界就職の手引き
鍋潤太郎氏による、海外のVFX業界で働くための手引き。お薦めです。

2013年1月1日火曜日

ワーク・フローとパイプラインを考えてみる その1

新年あけましておめでとうございます。木村でございます。今更ですが、今年からブログを始めることにしました。ブログって今だによく使われてるんでしょうかね。情報を発信するにあたって、何か適切なメディアはないものかと考えたんですが、結局ブログしか思いつきませんでした。特にログ形式にする必要もないので、何か良い情報頂いたら、将来的にそれに乗り換えようかと思っています。

ここでは主にお仕事のお話をさせて頂きます。昨今では海外で働いている日本人デジタル・アーティストも、それこそ掃いて捨てるほどいますから、だいぶ今更感もあるかと思います。実際のところ、私自身カリフォルニアで6年半、ハワイ時代も含めると既に10年近くアメリカでやっている訳でして、正直なところ話に新鮮みを持たせられるか自分自身疑問ではあるんですが、今でも結構日本や韓国にいる友人や知人から、アメリカでどういう風に仕事をしているのか、と質問を頂戴することがあります。今までも個別にそれなりご返答はしていたんですが、なにぶん一言でお答えするのが難しい内容が多いので、文章にまとめさせて頂こう、と考えた次第です。

第1回目は、最近友人からもらった質問に答える形で、長編映画(アニメーション、もしくは実写映画のビジュアル・エフェクツ)のプロダクション・ワーク・フローおよびパイプラインについて、複数回に分けてお話しさせて頂きます。その1では、組織の構成について考えます。ちなみにこのシリーズを通して、ここでは私がこれまでアメリカで働いて来たプロダクション ー Square USA, DreamWorks Animation, Sony Pictures Imageworks, Walt Disney Animation Studios, Rhythm & Hues Studios ー での経験をもとにお話をさせて頂きますが、個別のプロダクションでのやり方を詳細に記述すると契約違反(社外秘の公開)になる可能性がありますので、抽象化して一般的な例としてお話しさせて頂きます。その点ご理解頂くようお願いいたします。

組織の構成

パイプラインを構築するにあたっては、まず組織をどのように構成するかということなんですが、一般的には以下のような形が多いかと思います。

  • バックグラウンド、プロップ・モデリング
  • キャラクター・モデリング
  • ルック・デベロップメント
  • リギング(セットアップ)
  • レイアウト
  • アニメーション
  • ヘア、クロス・シミュレーション(テクニカル・アニメーション)
  • ビジュアル・エフェクツ
  • ライティング
  • マットペイント
  • コンポジット

以前頂いた質問に、「レイアウトなんですか、それともアニマティクスなんですか」というものがあります。実はこの違いに関しては、私自身もよくわからないので、ご存知の方がいましたら教えて頂きたいんですが(いきなり初回から頼りない話で申し訳ないです)、感覚的には、アニマティクスがよりプリ・ビジュアライゼーション(プリビズ)に近いものだととらえています。これは実写のビジュアル・エフェクツの場合特に、プリビズがポスプロの会社とは別の会社が行うことが多いことも関係しています。アメリカではプリビズ専門の会社もいくつか存在します。そしてこの場合レイアウトは、ポスプロの会社で最終的な映像のセット・レイアウトを決める作業のことをさす意味合いが強い、というのが私の見解です。フューチャー・アニメーションの場合、プリビズもプロダクションのレイアウトも同じ会社が行いますが、プロダクションのレイアウトはプリビズから変わってしまうことが多いです。アセットの名前の共有化などは進めてもいいですが、ここの連携にあまり固執する必要はないでしょう。

ここであげさせて頂いたのは、アメリカの大手プロダクションのディビジョンの分け方ですので、日本で中小のプロダクションが参考にしたいという場合、この例をそのまま当てはめるのは無理があるでしょう。例えば、全員で30〜50人規模のプロダクションでここまで分業化を進めてもあまり意味がありません。ショットの数が少なければ、上から下までをゼネラリストがやってしまうのもありですが、長編映画、特にフューチャー・アニメーションではきついでしょう。そうなると、どういう風に作業を兼業するべきか、というのが課題になります。基本的には、作業の性質上兼業化しやすいものというのはもちろんあります。

例えば、ヘアやクロスのシミュレーションをリギングTDやアニメーターがやっていたケースがあります。これは技術的な難易度の違いによって振り分け方が変わりまして、リグを調整しながらでないと出来ないほど複雑なものに関してはリギングTDが、逆にパイプラインが出来上がっていて、多少のパラメータを調節するだけで作業を流せる、という場合はアニメーターが、という具合です。

また、ルック・デベロップメント(ルックデブ)とライティングも兼業されるケースが多いポジションです。ライティングもルックデブも、シェーディングに関わる作業ですので、これも当然かと思います。ただし、テクスチャ・ペイントやシェーダー・ライティングは専業のアーティストやTDがやるケースがほとんどです。また、フューチャー・アニメーションのプロダクションでは、ライティングがコンポジターを兼業するのが普通です。実写のビジュアル・エフェクツではコンポジターが別にいて作業をするのが普通ですが、これも基本的にはコンポジット作業の難易度と複雑さによるものです。

ところで、これらの各デパートメントはそれぞれのスーパーバイザーが率いることになる訳ですが、その肩書きに関して良く質問を受けることがあります。例えば、今回も「CGスーパーバイザーは何をするんですか?」という質問を頂きました。この答えは非常に流動的でして、例えばあるプロダクションでは、アーティスティックな部分以外の全てのCGに関する監修、監督をするポジションとして扱われていましたし、また別のプロダクションでは単純にライティング・スーパーバイザーのことをそう呼んでいました。別のプロダクションではライティング・スーパーバイザーのことはその通りに呼び、CGスーパーバイザーはいませんでした。また、肩書きのニュアンスはプロダクションがフューチャー・アニメーションか実写のビジュアル・エフェクツかによって変わる場合もあり、例えばVFXスーパーバイザーは、実写のビジュアル・エフェクツではポスプロの作業全体をスーパーバイズするかなり位の高い仕事ですが、フューチャー・アニメーションでは単にエフェクツ・デパートメントの長を意味します。しばしば日本の方から「このポジションとこのデパートメントの正確な役割、名称を教えてください」というご質問を受けるのですが、残念ながらこのアメリカにおいても正確で揺るぎない定義というのは存在しない、というのが私の見解です。もちろんガイドラインや推奨される呼び方、というものは存在します。アメリカのVFX業界のレポートで定評のある鍋潤太郎氏が執筆しておられるブログ「ハリウッド映像トピックス」に掲載されているこれらの記事をご覧頂くと、参考になるかと思います。

「日本のCGデザイナーという呼び名は時代遅れ?」

「みんな間違えていたCGクリエイターという呼び名」

ただ、最初の記事に記載されているものもVES(アメリカのVFX業界団体)のガイドラインであり、強制力があるものではありません。より重要なのは、ある肩書きを持つ人がどういう役割を演じ、どういう権限を持っているかをプロダクションの全員に周知させることだと思います。これが周知されていないと、レビューの時などにアーティストから「あの人誰?なんであんなこと言い出すの?」などといらぬ不信感をもたれかねません。

ということで、「ワーク・フローとパイプラインを考えてみる」その1では、組織の構成について考えました。次回はパイプラインとデータの流れについてお話ししたいと思います。

3 件のコメント:

  1. はじめまして、坂井竜一と申します。照明部をやっておりましたが病気にかかってしまいCGの分野に移れないものかと勉強中のものです。
    早速ですが質問させてください。特撮監督はどうなるのでしょうか。ミニチュアを撮影する係の長ということになっているみたいですが、演出にも口を出しますので違うような気がします。知り合いは普通にCGにだめ出ししてました。

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  2. 実写映画の撮影において、ミニチュアもCGも両方監修、監督するというのであれば、アメリカで言えばVFXスーパーバイザーが一番近いのではないかと思います。ただ、CGのダメな部分にただダメ出ししているというだけではダメで、監督とそれぞれのシークエンスをどう演出するのかを事前に打ち合わせ、それにふさわしいVFXの手法を選び出し、撮影時に必要な準備の指示出しをし(CGであれば、トラッキング用のマーキングや計測、ライティング用のHDRIの撮影など)、ポスプロ作業開始後はエフェクトの作業全般にわたって目配りをしていく必要があります。この際エフェクト自体の演出もしますが、常に監督からのフィードバックをもらい、それを現場のアーティストに伝えて素材をブラッシュアップしていきます。当然やることが非常に広範囲になりますので、プロジェクトによってはエフェクトのパートごとにサポートのスーパーバイザーが付く場合もあります。

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  3. ご返答ありがとうございます。10年ほど前知り合いの特撮監督が、自分の立場があやふやになってきて、ぼやいていたものでお聞きいたしました。

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