ハリウッドVFX業界就職の手引き

ハリウッドVFX業界就職の手引き
鍋潤太郎氏による、海外のVFX業界で働くための手引き。お薦めです。

2013年1月22日火曜日

ワーク・フローとパイプラインを考えてみる その4

マネージメント

映画の話で1回間が空いてしまいましたが、今回はマネージメントに関してお話ししたいと思います。私はマネージメントの経験があまりありませんので、やや外野からの意見になってしまいますが、たまに日本の方から「プロダクションのマネージメントがなってなくて」というお話をされます。何がダメなのかと聞くと、どうも歯切れのいい答えが返ってきません。恐らく、何が悪いのかはよくわからないが、現場の皆ががんばっているのに仕事が上手く流れない、とかそういうことなのではないかと思います。私も以前は仕事場のマネージメントに疑問を感じていたことがありまして、これはよいマネージメントの仕方を知らないという、技術的な問題なのではと考えていたのですが、どうもそれも違うようです。基本的にはマネージメントはプロダクションによって個別の要因が多すぎますので、まずは現場のアーティストやTDに話を聞いてみることが重要かと思います。彼らも根本的な解決策がわかっている訳ではありませんから、現場の問題点と個人的な不満、人間関係の齟齬などを一緒くたにして話すと思いますが、そこをうまくフィルタリングして問題点を洗い出す他ありません。

ただ、私がいくつかの日本のプロダクションを見た感じでは、どうも単純に人手不足な感じもします。私が以前働いていた日本の会社では、ディレクターがなかばコーディネーターやプロデューサーを兼ねていたということがありました。短編ならまだしも、長編では忙しくてとてもマネージメントどころではありません。また、逆にプロデューサーなのにプロデューサーとしての権限を十分持たされていないということもありました。権限を要求する、となると「何だ、偉くなりたいのか」などと感情的な反発を受けたりして、慎重にならざる得ませんが、組織において役割と権限が明確化されていないと、マネージメントが十分に行き届きません。この点アメリカはかなりはっきりしています。

また、人手が足りなくて十分なマネージメントが出来ないのに、エクセル表のようなものだけですべてを管理しようとしているのでは、効率が上がりません。こういったツールは私も疎いのですが、Shotgunの様なサービスがいくつかありますので、それらを検討してみるのも手かと思います。ちなみに私が今まで働いて来たアメリカの会社では、パイプラインのツールもマネージメントのツールもほとんど自前でした。もちろんコアの部分は市販のSQLサーバーなどを使っていたかもしれませんが、少なくともクライアント側はほとんど自前だったと思います。これは自社のパイプラインやマネージメントに合わせて柔軟に設計できるという利点がありますが、プロダクションの規模が十分に大きくないと、そこまでするのは難しいでしょう。

逆にプロダクションの規模が大きいと、問題が起こったときに、それをしかるべき相手に報告したり、解決するために適切な担当者に作業を振り分けたり、作業のステータスをトラックするのが難しくなってきます。そこで、多くのプロダクションでは問題が挙ったときに、それを報告し、トラッキングするシステムがあります。OTRSのようなチケット・リクエスト・システムをベースにしており、ネット上でサービスを提供している会社が、顧客からの問題報告を受け付けるのによく利用しているので、ピンとこられる方もいるかと思います。問題を報告するときは、新しいチケットを切ってサブミットすると、その情報が担当者にメール等で送られます。解決途中のステータスや、他の担当者に作業がまわされたときなどは随時そのチケットにアップデートが送られるので、チケットのIDがわかれば誰でもステータスをチェックすることが出来ます。

アメリカのプロダクションのマネージメントにはまずショウ毎の階層があり、その頂点にプロデューサーが立って、予算やグローバル・スケジュールの管理、クライアントとの交渉等を行います。プロダクション・スーパーバイザーがその下について、各デパートメントのスケジュールや人材の管理を行います。実際の作業が進行する現場では、コーディネーターが各チームにつき、全ての作業の進捗管理とアーティストの作業のアサインメントを管理するのが普通です。

この階層とは別に、プロダクション全体のマネージメントがあり、各デパートメントの長はまさに「マネージャー」と呼ばれます。マネージャーという言葉は、日本語ではどうも付き人や世話役っぽい語感がありますが、アメリカのそれを日本語に訳すと、多分「部長」くらいにあたるのではないでしょうか。各アーティストやTDはさまざまなショウを行き来しつつも、基本的には常にこのマネージャーの管理下におかれます。マネージャーは各ショウのプロダクション・スーパーバイザーと、ショウが始まる際どういう人材が必要なのかを話し合い、それによって各アーティストやTDをショウにアサインします。これが私の知る限り、一番一般的なアメリカのプロダクションでのマネージメントです。実は、アメリカではアーティストやTDには日本人がたくさんいるのですが、マネージメントにはほとんどいません。英語ですとことさらにざっくばらんに話すのが難しいテーマですので、私としてもマネージメントに関しては、この程度の知識しか持ち合わせていないのが現状です。

今回でワーク・フローとパイプラインを考えるシリーズは終わりにさせて頂く予定だったのですが、もともとの質問を頂いた方から、各役職の肩書きについてもう少し詳しく教えてほしい、との追加の質問を頂きましたので、次回は補足として肩書きの話をさせて頂きます。

リンクのコーナーに、OXYBOTのプロデューサーであり、Cinefex Japanの編集もされている杉山さんのブログ「スギログ(sugiLOG)」を追加させて頂きました。世界中のVFXスタジオのメイキングなどがハイペースでアップされていて、お薦めです。ぜひ一度ご覧ください。

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