ハリウッドVFX業界就職の手引き

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2013年1月5日土曜日

ワーク・フローとパイプラインを考えてみる その2

どうも、木村でございます。第1回目の投稿後、何人かの方から「読ませてもらうよ」と声をかけて頂いたり、ご自分のブログやFacebookで紹介したりなどして頂きました。この場を借りてお礼を申し上げさせて頂きます。想定以上の好調な出だしではないかと思います。実はブログを書くのは今回が初めてでして、まだちょっと勝手をわかっておりません。画面もかなりスカスカなので、他にブログを書いている方のリンクを紹介させて頂いたりするなど、充実させいきたいと思います。今回書き始めるにあたって、「アファリエイトなどやって大もうけできるかな」などとさもしい計算も働かせていたのですが、考えてみると、ブログの内容上、さしてご紹介できる商品がないことに気がつきました。とりあえず代表作品のリストにアマゾンのリンクを張っておいたのでかなりウザいかと思いますが、ご容赦ください。

さて本題ですが、「ワーク・フローとパイプラインを考えてみる」シリーズその2として、今回はプロダクション・パイプラインとそこを流れるデータの流れに関してお話をさせて頂きたいと思います。

パイプラインとデータの流れ

多くのプロダクションでは、各デパートメントが作成したデータを他のデパートメントで利用できるように、パッケージされたデータ(通常こうしたデータのことをアセットと呼びます)をアクセスしやすい場所に保管します。そのため、パイプラインの構築においてはデータの独立性に注意を払います。具体的には、以下のような点です。

  1. アーティストの作業データと、プロダクションで実際に使うデータの独立性
  2. 各デパートメント間で共有するデータの独立性

1に関してですが、作業データには、プロダクションの他のデパートメントでは必要としていない多くのデータが含まれているため、これらを取り除くのが重要です。作業データと出荷データはそれぞれ個別にリビジョン(バージョン)が管理される場合もありますが、どのバージョンの作業データがどのバージョンの出荷データのもとのなっているかの関連づけはなされているのが普通です。バージョンの管理はCVSに似たリビジョン管理ツールを使うものから、バージョン・ディレクトリを作ってそれをアーカイブしていくものまで、さまざまです。

2は複数のデパートメントにまたがって参照されるようなアセットの場合、特に重要で、他のデパートメントに与えるインパクトが考慮されます。ジオメトリやパーティクルなどの場合、データの読み込み負荷を極力下げるために、リグやアニメーション情報をベイク・アウトして出荷するのが普通です。ベイク・アウトとは、変形や移動の情報をジオメトリやパーティクルにフレームごとに直接書き出してしまい、ストリーミング・データを出荷するプロセスです。ライティングなどでアプリケーション内にキャラクターのリグ等を読む必要がなくなるため、作業が素早くできるという利点があります。当然のことながらアセットを出荷するだけである程度のCPUパワーを必要としますし、ディスクも圧迫しますので、小さなプロダクションでは敷居が高いかもしれません。いずれにせよ、他のデパートメントで参照されるアセットは、必ず共有エリアに出荷されるか、共有されることをマーキングされ、どのバージョンがプロダクションで使われるべきかが明示されます。プロダクションによってはこの出荷プロセスを「(共有エリアに)チェックインする」とか、「パブリッシュする」とか、「(他のデパートメントに)コミットする(送り出す)」とかさまざまな表現をします。また公式に使われるバージョンは「アプルーブド・バージョン(承認されたバージョン)」とか、「オフィシャル(公式)」などと呼ばれ、アセット管理ツールによって他のデパートメントからの参照が可能になります。

多くの場合、どのプロダクションでもアセットの出荷には専用のツールが有り、自動的にこうした段取りを整えてくれるようになっていますが、中にはこれが非常に難しい場合があります。ビジュアル・エフェクツのアセットは特にそうで、エフェクツTDは自らがレンダリングしたイメージをコンポに渡す場合と、素材を主にレイアウトやライティング・デパートメントに渡す場合があるのです。エフェクツの素材は汎用タイプのデータもありますが、素材によってはショット毎にワンオフになるということもザラです。こうなるとデータ構造がパイプラインを通らなくなるので、アセットのハンドオフがかなり難しくなります。私が以前関わっていたプロジェクトで、やはりそうしたエフェクツ素材をライティングしなければならないことがあったのですが、あるとき担当のエフェクツTDから連絡があり、「今からアセットを引き渡したいので、どこそこのディレクトリにある自分のファイルを開いておいてほしい」と言われました。ファイルを開いて待っていると、そのTDが私の席にやってきて、自分のシーンから必要なデータを選び出し、私のシーンにコピペして帰っていったことがあります。ちなみにこれはちゃんとしたハリウッドの映画会社が配給する長編映画のプロジェクトでした。

こうした場合どうすべきでしょうか。選択肢としては、「人生こういうこともある」とコピペを受け入れるか(私はそうしました)、パイプラインに通る範囲の テクニックで制作を行う、というのがあります。「パイプラインを通すためだけに表現力を落とせというのか?それじゃ話が逆だろ」とお怒りになる方もいられるかもしれませんが、これは特にフューチャー・アニメーションの場合起こりえることです。フューチャー・アニメーションでは映画の映像全てをCGで作らなければならないため、物量がかなりのものになります。その一方で、映像はスタイル化されているため、必ずしもリアリティの頂点を極める必要がありません。社内のリソース、プロジェクトのスケジュール、映像の表現レベルを鑑みて、作業効率のため全てをパイプライン内におさめるというのも、一つのやり方だと思います。


さて次回は、こうしたアセットを利用して作成されるシーンのデータがどういったデータ・ストラクチャ上で構築されていくのかを考えてみたいと思います。

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