ハリウッドVFX業界就職の手引き

ハリウッドVFX業界就職の手引き
鍋潤太郎氏による、海外のVFX業界で働くための手引き。お薦めです。

2013年3月1日金曜日

Hollywoodでデモ行進してみる その1

前回、VFX業界がアカデミー賞に合わせたデモを主催した、というお話をしましたが、今回はこれに関してレポートをしたいと思います。



ここ数年アメリカのVFX業界は、競争の激化と、それに伴うVFXの市場価格の下落で厳しい舵取りを迫られており、以前もお話ししましたが、中堅どころの優秀なスタジオが幾つか閉鎖される、という事態に追い込まれました。また、大手でも昨年Digital Domainが倒産し、更生手続き(チャプター11)をした後、最終的に中国とインドの会社に買収されるなど、余談の許さない状況が続いています。こうした状況に伴って、多くのVFXアーティストやTDがレイオフされたり、給与の削減を要求されたりしており、VFX業界で働く人々の不満が鬱積していた訳ですが、今回Rhythm & Huesがチャプター11の手続きをとったことにより、以前からこの状況を危惧していた人々の間で、アカデミー賞の授賞式に合わせて、ハリウッドでデモをやろう、という呼びかけが行われたのです。

Rhythm & Huesのケースがこの動きのきっかけになったのには、幾つか理由があります。まずLAエリアには、中小も含めるとまだかなりのスタジオがありますが、Rhythm & Huesのように数百人ものアーティストや技術者を抱える大きなスタジオは(アニメーション・スタジオを除くと)Digital DomainとSony Pictures Imageworksくらいです。LAには他に比較的大きなスタジオとしてMethodやPixomondoがありますが、この大手3社ほどの規模はないはずです。今回、Rhythm & Huesは倒産に伴って250人近い人員を解雇していますから、問題が起きたときのインパクトも極めて大きい訳です。



また、Digital Domainが機関投資家によってメディア・グループに仕立て上げられ、IPO(株式公開)や自治体からの助成金でぬれ手に粟の利益を出そうとしたあげく、資金繰りに行き詰まって倒れたのとは異なり、Rhythm & Huesは創業者達によって堅実に経営され、業界でも優良会社として知られてきた会社であったにもかかわらず、倒産を余儀なくされた、という衝撃も大きかったようです。あのRhythm & Huesですら倒れるのであれば、もうどこが倒れてもおかしくない、という空気が醸成されたことは間違いないでしょう。

直接のきっかけは、元Digital Domainの創業者の1人であるScott RossがTwitter上にデモを呼びかけるような文言をツイートしたのを読んだVFXアーティスト達が、それを実行に移すべく行動したのが始まりとされています。ちなみにその時の文言は以下のようなものだったとされています。

I had a dream, 500 VFX artists near the Dolby (Kodak) theater on Oscar day waving signs that say “I WANT A PIECE OF THE PI TOO.”


その結果、FacebookやTwitterなどを通じて呼びかけが広まり、アカデミー賞受賞式当日、会場のDolbyシアターから東に9ブロックほど離れたVineストリートとHollywoodブルーバードの交差点に参加者が集合し、そこから西に移動してDolbyシアターまで6ブロックほどのWilcoxアベニューまでデモを行うことになりました。Dolbyシアターからここまで離れてしまった理由は、Dolbyシアターの東西4、5ブロックほどは授賞式のために交通封鎖されており、警察からの許可が下りなかったためだと思われます。




デモは2時半くらいから始まり、3時半くらいには、誰が資金を拠出したのかは定かではありませんが、横断幕をつけた飛行機がDolbyシアター上空を旋回するという大掛かりな仕掛けまで行われました。横断幕には、"BOXOFFICE - BANKRUPT = VISUAL EFFECTS   VFXUNION.COM"と書かれていましたが、VFXUNION.COMとはその名の通りVFX業界で働く人たちのための組合であり、まだ存在していないものです。今、この組合を立ち上げようと、何人かの人たちが行動を起こしており、この横断幕もその支持を訴えるためのものだったようです。


結局、Scott Rossが呼びかけた500人には届かなかったものの、480人近い人々が集合し、この模様は業界紙のVarietyThe Hollywood Reporterなどでも取り上げられました。この日のニュースは、これで終わりになるはずだったのですが、この後Dolbyシアターで行われた出来事が思わぬ波紋を呼ぶことになります。それについては、また次回お話しさせて頂きたいと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。