ハリウッドVFX業界就職の手引き

ハリウッドVFX業界就職の手引き
鍋潤太郎氏による、海外のVFX業界で働くための手引き。お薦めです。

2013年4月29日月曜日

自分の仕事をプレゼンしてみる その2

「自分の仕事のプレゼンをしてみる」の2回目ですが、いきなりお知らせがあります。前回「次回はカバーレターのお話をします」と書いたのですが、カバーレターの話を書いてみたところ非常に短かったので、前回の投稿に追加書き込みをすることにしました。カバーレターについてお知りになりたい方は、前回の投稿をご覧ください。そういう訳で今回はデモリールのお話をさせて頂きます。

デモリール

皆さんがプログラマーやエンジニアなど、直接絵作りに関わっていない職種でない限り、デモリールは必ず必要になります。デモリールが何かを一言で言いますと、皆さんがこれまで関わってきた仕事の映像を1本の作品にまとめたものです。CG業界の黎明期には、基本的にこのデモリールは3/4やベータカムなどのビデオテープで作り、VHSにダビングしていましたが、それがDVDに移行し、今はオンライン上のビデオ・ファイルやストリームで見せるのが主流になっています。ビデオ・ストリームをアップするサイトとしてメジャーなのはYouTubeやVimeoでしょう。Vimeoはビデオの閲覧にパスワードを設定できるなどの機能があるため、デモリール用のサイトとして人気です。ただ、無料でアップできる容量はYouTubeの方が上なようです。

しかしこのデモリール作りというのがなかなかくせ者で、まず素材を集めるところからしていきなり大変です。実は制作に関わった映像をデモリール用にコピーさせてくれるスタジオというのは、アメリカのプロダクションでは少数派です。これは私の専門がライティングであるため、最終のショット映像を要求するため余計そうなのかもしれませんが、これまでLAで4つのスタジオで働いてきて、そのうちコピーをとらせてくれたのはWalt Disney Animation Studiosだけでした。Disneyにはデモリール用の素材の申請書というのがあり、これに自分の担当したショットを記述すると、ご丁寧にもミッキーマウスのラベルのついたDVD-Rにムービー・ファイルをコピーして渡してくれました。DreamWorks Animationは同様に申請書があったのですが、書いても全くコピーはもらえませんでした。この申請書は書いてもそのままブラックホールのようなところに吸い込まれてしまうのか、誰ももらったという話を聞かないのです。理由は謎です。

こうなりますといったいどうやってデモリール用の素材を集めればいいのか、ということになりますが、結局のところ制作に関わった映画がDVDやBlu-rayになった時点で、それをリッピングするというのが一般的なようです。当然これは厳密には違法行為ですが、他に方法がない以上致し方ないでしょう。リッピングした素材は、1)デモリール以外の目的では使わない。2)リールはダウンロードされないように、ストリーミング形式にする。などの自分なりの掟を作って作成するしかないでしょう。違法行為である以上、ここで実際にどうやってリッピングをするか、ということを詳細に記述する訳にはいきませんが、ネットを検索すればいくらでもこうした情報は出てきます。ちなみに私は、ゲーム会社で働いていた時の自分の担当素材をデモリールのおさめようとしたことがあるのですが、リッピングの仕方がわからず、自分でゲーム・プレイをしてそれをビデオ・レコーディングしようと試みたのですが、担当したムービーが何十時間もかかるRPGのラスボスを倒さないと出てこなかったため断念したことがあります。

素材が集まったらそれを編集して1本のデモリールに仕上げる訳ですが、この時の長さはだいたい3分前後がよいとされています。これはあくまでも目安であり、キャリアが長ければ当然入れたい素材もたくさん出てきて少々長くなってしまう可能性も出てくるでしょう。しかしそうした場合でも、4分を超えるような長さにはしない方がいいようです。アメリカの大手VFX、アニメーション・スタジオともなると、応募者が殺到して一人当たりのリールを悠長に4分も5分も見ている時間はありません。長くなりそうであれば、あまりにも古いものは捨ててしまい、直近の10年分などに絞った方がよいようです。また、実際には長くなくても、見ている人に長いと感じさせてしまう作り方があります。1ショットを異常に長く見せたり、1つのシークェンスから連続するショットを幾つも入れると、実際にはそれほど長くなくても長いと感じさせてしまうものです。1ショットあたりの長さは1秒から3秒、連続するショットは3ショット程度にとどめておくのが無難です(と言いながら私のデモリールにはそうでない素材が結構ありますが)。履歴書の職歴欄に関しても書きましたが、素材は基本的に新しいものから先に入れていきます。

一方、新卒や経験が浅いアーティストは、2分でもリールをいっぱいにするのが大変かもしれません。この場合はなんとか素材を見繕って1分は超えるようにがんばりましょう。あまりにも短いと、やはり「あれ、これだけ?」という印象を持たれてしまいます。リールを長く見せるテクニックとして、よくメイキングのような映像を作って入れるケースを見かけます。ショットのワイヤーフレーム、テクスチャ無しのシェーディング、ライティング、そしてエフェクトを合成したもの、という順で見せたりするものです。親切でわかりやすいですが、こうした映像をスタジオの許可無しに作ってデモリールに入れることは、私の理解では多くの場合契約違反です。許可を取るか、自分の自主制作映像などに限ってやった方が無難でしょう。

こうして作ったデモリールには、必ずブレークダウン・シートを添付するようにします。これはリールに入っている素材の実際にどこを作ったのか、といったことを書き添えたリストで、面接などの際には、このブレークダウン・シートをチェックしながらデモリールを一緒に見たりします。使ったソフトウェアやテクニックなども添えておくと、更に親切でしょう。

次回はウェブサイトの作り方についてお話ししたいと思います。

(追記)Rhythm & Huesにはデモリールの素材の申請書がない、と書きましたが、Rhythm & Huesの元同僚の方から「あった」とのご指摘をいただきましたので、この記述は削除しました。


5 件のコメント:

  1. Dreamworksに勤めてるものです、はじめまして!
    デモリール素材はかなり大々的に募集しています、これが無視されるとは考えられないですが。。。本当に無視されたらお知らせします(笑

    過去にRising Sun Pictures, Dr.Dと勤めましたが両方とも
    デモリール素材はもらえました。辞めた後でもメールで知らせてくれ、
    カラコレしてロゴの入ったものを、親切にFTPにあげてくれました。

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    1. そうですか、hajimeさんがおられるところはRedwood Cityですか?向こうだとまた違うと聞いたんですが。僕がいたころ(2006-2009)は申請出してももらえなくて、結構周りの人もそんな感じで当惑してましたね。Glendaleでもちゃんともらえるようになったとすれば、多分苦情が多くて改善されたんでしょう。頻繁にレイオフやるようになったので、多分その辺のケアぐらいちゃんとしてやろうということかもしれませんね。

      ちなみに何が専門ですか?ライティング以外だと、多分外に出ない映像とかもあると思うんですが(例えばモデリングのターンテーブルなど)、そいういうのももらえるんですかね。

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    2. GlendaleのLightingに勤めています。きむらさんの後輩にあたりますね、よろしくお願いします!

      初めての仕事、TURBOがもうすぐ公開なので、
      デモリール事情が改善されたかどうかもそのうち明らかになるとおもいます。

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    3. 昨日デモリール、無事もらえました!
      DVDサイズで90秒リミットはありましたが、とりあえずご報告まで。

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    4. そうですか、それは良かったですね :D

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