ハリウッドVFX業界就職の手引き

ハリウッドVFX業界就職の手引き
鍋潤太郎氏による、海外のVFX業界で働くための手引き。お薦めです。

2013年6月24日月曜日

写真を撮ってみる その3

木村でございます。写真を撮るお話をさせて頂いていますが、今回は実際の撮影についてご説明します。ちなみにこれからお話ししていく中で何度か私自身が撮影した写真に触れますが、これらの写真は全て私が3年前くらいに買ったCanonのEOS Kiss X4というエントリー・クラスのデジタル一眼レフ(APS-Cサイズ、1800万画素のセンサー)で撮影したものです。レンズはキット・レンズの18-55mm F3.5-5.6ズーム・レンズとSigmaの30mm F1.4という単焦点レンズを主に使っています。いわば私が第1回に挙げた3つの条件を満たすものの下限と言っていいレベルのものですから、皆さんがどういうカメラをお持ちであれ、難しくはないと思います。お気楽にお読みください。

撮影の準備

さて、第1回でお話しした条件に合うようなカメラを皆さんがお持ちであれば、恐らくボタンやらダイヤルやらがたくさんついていると思います。メニュー・ボタンのようなものがついていて、押すと後ろの液晶に非常に見づらいメニューが表示され、パラメータがたくさん現れて、やる気を一気にそがれます。ここではある特定の機能にのみ集中してカメラを操作されることをお勧めします。それは絞り、シャッタースピード、そして感度(ISO)です。それ以外の機能、例えばホワイト・バランスだとか、ピクチャースタイルのような機能(写真を特定のテイストに仕上げるような機能)は全て無視してください。前回も申し上げたように、写真はRAWフォーマットで取りますが、その場合こうした設定は後でいくらでも変更可能です。またオートフォーカス・モードや測光方式など比較的重要な機能もありますが、これらは写真に慣れてきたらおいおい勉強すればいいので、今はデフォルトの設定にしておけば大丈夫です。

集中すべき要素、絞り、シャッタースピード、感度ですが、これらも結局は多くの場合ほぼ一つの要素を決めれば、残りも決まります。カメラのモード設定の中に絞り優先、シャッタースピード優先というモードがあり、絞りかシャッタースピードを決めれば残りが自動的に決まってしまうようになっているのです。シャッタースピード優先モードは動きの速い、スポーツや乗り物などを撮影するのに便利ですが、ここでは絞り優先モードをお勧めします。感度は基本的にオートにしておけば適切なものをカメラが自動的に選んでくれますが、あまり高感度になると画像にノイズが発生して汚くなります。カメラによってはオートでも最大感度を設定できるようになっているものがありますので、汚くなりすぎないようリミットをかけておくといいでしょう。

近くを撮る

ではまず近景のもの、人物や静物を撮影してみましょう。絞り優先モードにしたら、最大まで開けてみます。すなわち、最小のF値を選んでみます。私の場合はSigmaの30mmレンズがF1.4(写真下左)まで開けられますので、これとF5.6(右)で撮影したものを並べてみました。フォーカスはいずれも一番上の本の表紙のタイトルのあたりに合っています。F1.4で撮影したものは背景にあるソファがかなりボケています。縮小したのでちょっとわかりづらいかもしれませんが、画面下の本の背表紙もややボケています。それに比べるとF5.6の方は背景のソファにもフォーカスが合っていて、ややゴチャゴチャした感じがします。


人物や静物など、比較的はっきりした対象がカメラに近い位置にある場合、フォーカスの合う範囲を出来るだけ対象物に絞って撮ると、画面が整理されてみやすくなります。携帯のカメラや全自動モードだけのカメラで写真を撮るといかにも素人が撮ったように見えるのは、フォーカスの合う範囲が限定されていないので、非常に画面が雑然として見えるためです。最近ではCGやコンポジットのソフトにも、DOFの設定にF値を設定するようになってきているので、写真を通して焦点距離やF値とDOFの関係を理解しておくと良いでしょう。

遠くを撮る

では次に遠くのもの、即ち風景を撮影してみます。今度は絞りを絞ってみます。風景写真は全体にフォーカスがあっていた方がいいので、なるべく高いF値を選びたいところですが、実は絞れば絞るだけいい、という訳でもないようです。多くのレンズは解像度がF8とかF11とかぐらいでマックスに達する、と言われています。これを超えて絞り込むと、回折(かいせつ)と呼ばれる現象が起きて、かえって解像度が落ちてしまうのです。大雑把な人は「風景撮るならF8にしとけばいいよ」などと言ったりしますが、これもあたらずとも遠からずという訳です。決して絞ってはいけない、という訳ではないのですが、とりあえずF8にして撮ってみましょう。一応申し上げておきますが、回折は光学現象ですので、CGでは起きません。なのでCGのDOFではどんなF値を使っても大丈夫です。



風景の写真、特に明るい昼間などに陰のある場所で写真を撮ると、どうも思ったような露出にならずに苦労することがあります。多くの場合は空が真っ白に飛んでしまったり、そうでなければ陰が潰れて真っ黒になってしまったりします。こうした場合は、露出を何段階かに変えて撮り、後で適切なものを選んでRAW現像にかけます。カメラには多くの場合EV値(Exposure Value)を、カメラが選んだ適正値を基準にして上下何段階かに変えて撮ることが出来る機能が備わっています。このEV値は、日本語では段、英語で別の言い方としてStop、などとも言われ、「1段上げる」「2段下げる」とか「1 Stop Up」、「2 Stops Down」とか表現されます。1段下げるとセンサーに入ってくる光の量が半分になり、2段下げるとそのまた半分になります。ちなみにF Stopなどという言い方もありますが、これはF値のことを指しており、単位は同じではないので注意が必要です。

風景を撮っていると、カメラがまっすぐかどうか気になります。カメラによっては、電子水準器が内蔵されていて、ファインダーや後ろの液晶に、カメラがまっすぐかどうかを表示してくれるものがあります。この機能は積極的に利用しましょう。なければカメラのホットシューにつけられる水準器が別に売っていたりしますが、手持ちで撮っていればシャッターを切る瞬間にまた傾いたりするのであまり意味がありません。この場合も傾きがひどくなければ、ある程度RAW現像時に修正が可能です。

被写界深度と被写体との距離

ところで、風景を絞りを解放して撮影するとどうなるでしょう。例えば山の中腹から眼下に広がる風景をF1.4とかで撮影すると、近景と撮影したのと同じような浅い被写界深度が得られるでしょうか?そうでないことは皆さんも経験上お分かりと思います。被写界深度はレンズと被写体との距離に密接な関係があり、この距離が離れれば離れるほど被写界深度は深くなります。また最初の回でもお話ししましたが、レンズの焦点距離も被写界深度に影響を及ぼし、これが短ければ短いほどやはり同様に被写界深度が深くなります。この現象を逆手に取って、実写の風景をミニチュアっぽく見せるティルト・シフト・レンズを使った写真や動画を皆さんもご覧になったことがあるかと思います。これは画像処理のフィルタ機能などを使えば比較的簡単に模倣できますが、実際のレンズはどういったものかご存知でしょうか。以下に簡単な説明の動画があります。


フィルタ機能による単純なティルト・シフトの模倣は、実際の距離とは関係なくブラーがかかるため、下の写真のように不自然な部分(手前の建物の屋根など)が出来てしまいますが、CGではデプス情報に基づいてブラーをかけるので、正確なブラーをいくらでもかけることが出来ます。先にもお話ししましたように、浅い被写界深度はドラマティックな効果を生み出すため、ついつい面白がってかけてしまいがちですが、距離感や焦点距離を考えずにブラーをかけると、ミニチュアのような不自然な絵になってしまいます。CGでよく見かける失敗ですので、写真を撮りながら被写界深度の正しい感覚を身につけておくとよいでしょう。



次回は画像フォーマットとRAW現像についてお話をしたいと思います。




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