ハリウッドVFX業界就職の手引き

ハリウッドVFX業界就職の手引き
鍋潤太郎氏による、海外のVFX業界で働くための手引き。お薦めです。

2013年7月6日土曜日

写真を撮ってみる その4

VFXタウンホール・ミーティングのお話で1回間が空いてしまいましたが、今回は画像フォーマットとRAW現像についてお話ししたいと思います。この連載の最初の回で、現在VFXにおいてよく使われるファイル・フォーマットについて簡単にお話ししましたが、これらは単純にビットデプスが深い、という訳ではもちろんありません。そこで、まずRAW現像についてお話しする前に、画像フォーマットについて少し触れておきたいと思います。

JPEG

各イメージ・プレーンごとに8ビット。可逆、非可逆圧縮ともにサポートしていますが、可逆式はほとんど使われていないようです。CGではあまり使われませんが、写真の場合は最も一般的に使われるフォーマットです。RAW現像した写真も、最終的にウェブなどで公開する際にはこのフォーマットに書き出します。

IFF, RLA, PIC, SGI, 8ビットTIFFなど

長年CGで各イメージ・プレーンごとに8ビットのイメージを可逆式圧縮で保存するために用いられてきたフォーマットで、多くはCGのソフトウェア・デベロッパーによって開発されたフォーマットです。

CIN, DPX

デジタル画像において、広いダイナミック・レンジを保存することを意識して作られたフォーマットとして極めて初期からあるのがコダックのシネオン・フォーマット(CIN)で、DPXはそれを改良したものです。各イメージ・プレーンごとに10ビットで、扱いやすいようにRGBを32ビットでまとめていました。DPXは各プレーンごとに16ビットでも保存できます。先にに上げた2つのフォーマットが単純に色情報をリニアに記述していたのに対し、シネオンは対数を使って非線形に保存することで、色情報だけでなく、輝度のレベルもある程度保存できるようになっています。

Open EXR

VFXスタジオのILMが開発したハイ・ダイナミック・レンジを保存することを目的に考えられたフォーマットで、やはり同様の目的で考えられたHDRフォーマットが32ビットでしか保存できないのに対して、EXRは16ビットと32ビット両方での保存が可能です。16ビットは主に最終レンダリング画像を出力するためのフォーマットとして考えられたもので、公開されている文書によりますと、10ビットがカラー情報をリニアに保存するために、5ビットが露出値を記録する指数のために、1ビットが符号のために割り当てられています。恐らく現在のアメリカのVFXやアニメーション・スタジオで最も多く用いられているレンダリング出力フォーマットです。

RAWフォーマット

RAWフォーマットはデジタル・カメラのセンサーから出力された情報を可能な限り生のまま保存することを目的に考えられたフォーマットで、その点で通常の画像フォーマットとはかなり仕組みが異なります。まずフォーマットが各メーカーごとに異なる、というだけでなく、同じメーカにおいても機種(使っているセンサーの種類)ごとに異なっているのが普通です。色情報はリニアに書き出されますが、ビットデプスがそのセンサーの能力に依存するため、12、14、16ビットなどとまちまちです。また、多くのRAW画像はイメージ・プレーンが1つしかありません。これはデジタル・カメラのセンサーの多くが単板式と呼ばれる1枚で全ての色情報を拾う方式になっているためで、このセンサーの前にR、G、B各色のフィルターがそれぞれ異なる画素に割り当てられ、他の色の情報、例えばRのカラー・フィルターが割り当てられている画素はG、Bを周りにあるその色情報を持った画素から補完して求めるようになっています。このRGBのカラー・フィルターがセンサー上にモザイクの様に配置されていることから、この補完プロセスをデモザイク、などと呼んだりします。このデモザイクのプロセスもまたメーカーやセンサーによって異なり、これがよりいっそうRAWフォーマットの統一化を難しくしているようです。これに対してアドビが、カラー・フィルターの配列情報をファイル内に保持することが出来るDNGと呼ばれるフォーマットを提唱して、統一化を呼びかけています。しかしこのフォーマットを利用しているメーカーは今のところ一部に限られているようです。

RAW現像用のソフトウェア

RAW現像はPhotoshopの様なRAWフォーマットに対応している画像処理ソフトか、専用の現像ソフトで行うことが出来ます。RAWフォーマットで撮影を行えるカメラを買うと、大概はフリーの現像ソフトがついてくるので、それでやってもかまわないのですが、出来れば専用ソフトを購入することをお勧めします。機能や使いやすさが違いますし、将来カメラを違うメーカーのものに買い替えても同じソフトを使い続けられるというのはやはり便利です。

市販の専用ソフトは幾つかありますが、一番メジャーなのはアドビのLightroomかアップルのApertureでしょう。このレベルのソフトであれば、単純にRAW現像を行うだけでなく、写真のオーガナイズも容易に行えますのでお薦めです。ちなみに私はLightroomを使っていますのでこれからはLightroomの機能をもとにご説明しますが、Apertureや他の現像ソフトでも大体似たようなことは出来るはずですので、機能の固有名詞は上手く読み替えてみてください。

また、フォーマットの説明のところで申し上げましたが、RAWフォーマットはメーカーや機種によって異なるため、これらの現像ソフトは新しいカメラが発売される度にそのカメラに対応した現像モジュールを必要とします。多くはインターネットから自動的にダウンロードするようになっていますが、お持ちのカメラが最新機種の場合は、現像ソフトにそのカメラに対応したモジュールがインストール済みかあらかじめ確認することをお勧めします。

RAW現像の実際

では実際に現像をしてみます。まず以下の2つの写真をご覧ください。


左がRAW現像前のものをそのままJPEGに変換したもので、右が現像処理済みのものです。これは私が昨年京都に行ったときに撮ってきた金閣寺の写真ですが、露出を変えて何枚かとったもののうちの1枚です。他にももっと明るい写真もあったのですが、金閣寺のディティールがより鮮やかに写ってはいるものの、明るすぎて空が真っ白に飛んでしまい、リカバリーするのが難しかったため断念しました。一方この写真は、JPEGでは一見金閣寺が真っ暗に見えるものの、実際にはRAWファイルがしっかりとそのディティールを捉えており、調整次第で金閣寺の色をリカバリーできます。

私がRAW現像する場合は、大体まず使っているレンズ固有の絵の歪みや色収差を補正することから始めます。これはLightroomの様なRAW現像専用ソフトでは非常に簡単で、「プロファイル補正を使用」というオプションをクリックすれば、RAWファイルに埋め込まれたExifというカメラ情報から使用しているレンズの情報を引き出し、それに合わせて補正をしてくれます。ただし、これは必須という訳ではありません。レンズによってはこうしたレンズ特有の歪みや周辺光量落ちがむしろ味になっているものもあるため、そのままにしておくのもありかと思います。色収差は「色収差を除去」のオプションをオンにすればある程度補正してくれますが、この後カラー・グレーディングをしていく過程で目立ってくる場合もあるので、後で随時マニュアルで補正します。


次にイメージの幾何学的形状を補正します。前回の投稿でティルト・シフト・レンズに少しだけ触れましたが、広角レンズで写真を撮ると、どうしても極端なパースペクティブがついてしまいます。ティルト・シフト・レンズにはこれを補正して撮影する機能があるのですが、ティルト・シフト・レンズを持っていなくとも、多少の歪みであれば現像の段階でソフトウェア的に補正することが可能です。これはやり過ぎると不自然な絵になるので注意が必要です。また、被写体を画面の中で収まりを良くするために、傾きを調整したり、トリミングをしています。三脚を使えなかったり、カメラに電子水準器がなかったりして絵が傾いてしまったら、ここで調整してください。


次はカラー・グレーディングです。ここではホワイトレベルも補正できるので、まずそれをやったあと、カラー・レンジを調整します。
RAWファイルはJPEGの様な8ビットの画像よりも広いダナミック・レンジを保持していますが、人間の視覚に訴えるには極端に暗い部分を起こしたり明るい部分を落としたりして、色の幅を調整する必要があります。これをトーン・マッピングなどと呼んだりもします。Lightroomの様な現像ソフトは必ずヒストグラムを持っていますので、これを見ながら色のレンジを調整していきます。ヒストグラムの左右に見える三角はそれぞれ黒レベルと白レベルを表しており、ここに現れた色はそのレベルを超えていることを表しています。階調を上手く調整して超えないようにするのが望ましいですが、ネットに写真を上げて共有する程度の目的ならあまり神経質になる必要はないでしょう。また、金閣寺の写真は赤の部分(紅葉の部分)のみの彩度を上げたりしています。


黒く潰れてしまったり白く飛んでしまった部分を起こしていくと、コントラストの浅い絵になってきます。現像ソフトにはそれを調整するためにトーン・カーブで補正する機能もついています。単純にコントラスト値を調整するよりも、下限と上限を固定したまま調整できるので便利です。コントラストを調整する時は、時々写真を白黒にしてみるとわかりやすいので試してみてください。



最後は写真のシャープネスを調整し、ノイズを取り除きます。撮影場所が暗くてISO値を上げざるを得ない様な状況ではかなりノイズが入りますので、ある程度は現像時に取り除くことが可能です。ただし、やり過ぎるとディティールが甘くなってしまうので注意が必要です。



また、現像ソフトには赤目の修正や、スタンプ・ブラシを使ってゴミを取り除く機能などがありますので、試してみてください。

RAWファイルはJPEGよりもはるかに色の幅があるため、そのままビュワーで見ただけでは一見失敗しているように見えることも少なくないのですが、大事なのは必要な色のレンジが写真に納まっているか否かです。逆に言えばそれがあれば後でいくらでも自分の望んだ写真にすることが可能です。しかし、自然界の光は時としてRAWファイルでも捉えきれないほどのダイナミック・レンジがあることが少なくありません。この場合はどうすればいいのでしょう。それに対する解決が、いわゆるHDRI(ハイ・ダイナミック・レンジ・イメージ)です。そこで次回はこのHDRIに関してお話をしたいと思います。




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