ハリウッドVFX業界就職の手引き

ハリウッドVFX業界就職の手引き
鍋潤太郎氏による、海外のVFX業界で働くための手引き。お薦めです。

2014年3月24日月曜日

ワークフローとパイプラインを考えてみる その6

木村でございます。今月はちょっと大変な事になってましてね。前回も書きましたが、今The Millという会社でコマーシャルの仕事をしてるんですが、ものすごい突貫です。始めて次の週からはもう週末がなく週7日勤務、そして昨日はついに徹夜です。私LAに来てかれこれ8年経ちますが、徹夜というのは滅多にありません。カリフォルニアの労働法が厳しいのもありますが、基本アーティストが徹夜をしなければならないのはスケジューリングとマネージメントの失敗という考えがあり、やらせたがらないものです。しかし昨日はプロジェクトのメンバーの大半(ほとんどがFX、ライティング、コンポ)が明け方まで仕事をしていましたから、これは大変なものです。そのゲーターレードのコマーシャル、かなりかっこいいので皆さんに観て頂きたいんですが、どうみてもアメリカ国内向けのCMなので、アメリカ以外の国にお住まいの皆さんに観て頂くチャンスは薄そうです。ひょっとしたらYouTubeとかで観れるようになるかもしれませんので、リンクを見つけたらこのプログでお知らせします。

本題ですが、このブログの最初の回から何回かにわけてプロダクション・パイプラインのお話をさせていただきましたが、実は昨年の後半から日本の会社のためにプロダクション・ワークフローやパイプラインの構築の仕事を実際に受けるようになりました。それに関した研究を今しているところなんですが、その中でいくつか興味深い参考資料などを見つけましたので、今回はその御紹介をしたいと思います。

まず書籍なんですが、「Production Pipeline Fundamentals for Film and Games」という本で、これはアメリカでも先月発売されたばかりの本ですが、私の知る限りでは映画やゲームの制作現場で実際に用いられているパイプラインの実績的な解説書としては初めてのものです。これまでもVESのハンドブックなどはありましたが、VESのハンドブックがどちらかというとVFXスーパーバイザーやディレクターのためのVFXの作り方を総体的に解説した本であるのに比べると、この「Production Pipeline ~」は実際のプロダクションの現場で用いられている技術や方法論をかなり細かく説明しており、パイプラインTDなどを目指している方であればこちらのほうが役に立つでしょう。プロダクション・パイプラインはソフトウェアの使い方を学べば身につくようなものではありませんし、スタジオによってやり方が異なる上、通常は公にされることもありませんから、こういった本から学べることは多いと思います。扱っている話題はデータを保存しておくディレクトリ構造から名前のルール、アセットの管理とよく使われるツール、音響やカラー・マネージメントなど多岐にわたっております。私が個人的に面白かったのはSQLサーバーとNo SQLサーバーのどちらでどういうデータを管理すべきか、というテーマで、データベースならSQLなんだろうと決めつけていた私には興味深いものでした。

もう1冊が「The Visual Effects Producer: Understanding the Art and Business of VFX」という本で、これはタイトルから想像できる通り、プロデューサーの立場からどうやってVFXスタジオを運営していくか、というマネージメントに重きをおいた話をまとめたものです。この本はやや古い(2009年)ので今のVFX業界の状況を反映してはいないかもしれませんが、実際にVFXの制作にかかるコストやその計算方法、スケジューリング
など、めったにうかがい知ることのできない話が書いてあります。また、実際に使われているショット・ブレークダウン・シートのひな形のようなものを例に取りながら、VFXの作業がどのように進められていくかを解説してある章もありますので、マネージメントだけでなく、実制作に携わる方にも興味深いのではないかと思います。この英語の2冊の本は日本のAmazonからも手に入ります。

先ほど取り上げた「
VESビジュアルエフェクトハンドブック」(上巻)(下巻)ですが、実制作のパイプラインに関する話題は少ないものの、VFXの制作全体を俯瞰できる解説書としてはやはりためになります。なんといってもこの本のいいところは日本語訳が出ているところで、上下に分かれており、それぞれが1万円近くとかなり高額ですが、一度手にとってみることをおすすめします。なお英語でも構わない、という方は上下に分かれていないので、日本語版の半額以下で手に入ります。

ところで、LAにはプロダクションのパイプライン業務に関わるTDやエンジニアが定期的に集ってミーティングを開き、情報を交換する場があります。そしてこのミーティングに参加できなかったグループのメンバーのために、ミーティングの模様を収録してYouTube上に公開しています。Los Angeles Pipeline Meetupというグループで、ちょうど先週もこのミーティングが行われました。私は参加できなかったのですが、その模様がYouTubeに上がっていましたので、ご紹介します。


今回のテーマはオープン・ソース・プロジェクトを実際のプロダクション・パイプラインにどう取り入れるか、ということをテーマに行われたようで、議題にはOpenColor IOAlembicOpenVDBが取り上げられ、Sony Pictures ImageworksやDreamWorks Animationで実際に開発にあたっていたエンジニアが解説を行っています。YouTubeだと少々画質が悪くてPower Pointの画像が見づらいので、LAにお住いで興味のある方は実際に参加してみると良いのではないでしょうか。

以上、パイプラインのお話でした。



2 件のコメント:

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。