ハリウッドVFX業界就職の手引き

ハリウッドVFX業界就職の手引き
鍋潤太郎氏による、海外のVFX業界で働くための手引き。お薦めです。

2014年8月7日木曜日

SIGGRAPHの見所をチェックしてみる

木村でございます。あらかじめ申し上げておきますが、私は今年はSIGGRAPHには参加しません。貧乏暇なしと言いますか、一日たりともスケジュールを空けられない状況が続いておりまして、今年はネットでチェックして終わりになると思います。しかしこれまで漏れ伝え聞くニュースだけでも、今年のSIGGRAPHは面白そうなイベントで目白押しの模様です。そこでSIGGRAPHに参加される方のために、そういたイベントやニュースを幾つかピックアップしてみましたので、よろしければ参考にしてみてください。ちなみに全くSIGGRAPHに無頓着な方のためにお話ししますと、今年のSIGGRAPHは8月10日から14日までカナダのバンクーバーで開催されます。


Arnold GPU Prototype

AMDの公式ツイッターアカウントによりますと、ArnoldのGPUバージョンのプロトタイプがSIGGRAPHで発表されるようです。Solid Angleは既にSIGGRAPHにおいてCinema 4DとHoudini向けのArnoldを発表する事を公表しており、同社の勢いを物語っているようです。Arnoldはもともと純粋なモンテカルロ・レイトレーサーに最も近い、と言われていますから、GPUによる並列演算には向いているレンダラの1つでしょう。興味深いのは、このGPU版Arnoldの発表がAMDのブースで行われるという事です。GPUを汎用のコンピューティング技術に応用する分野ではNvidiaに一日の長があり、多くのこの手のレンダラがその開発に同社のCUDAを用いています。CUDAで作られたソフトウェアはNvidiaのグラフィック・ボードでしか走らないため、GPUレンダラの利用者の多くはNvidiaのユーザーです。GPUの開発環境には他に特定のプラットホームに依存せずに開発が可能なOpen CLというフレームワークがありますが、CUDAほどは浸透しておらず、AMDがこの状況を苦々しく思っているのは想像に難くないでしょう。CG Channelによりますと、このGPU版ArnoldはOpen CLのみによって書かれているとの事ですから、AMDが何らかの形で協力した可能性も大きいと思われます。

Houdini Indie

Side Effectsの公式ツイッターアカウントではHoudini Indieという画像がアップされており、これが憶測を呼んでいます。HoudiniはこれまでHoudini EngineというHoudini上で作成できるデジタル・アセットを他のソフトウェアで実行できるソルーションをUnreal Engineなどにポートしており、ゲーム・コミュニティの関心を集めているため、Maya LTのようなゲーム開発向けのHoudiniになるのではないか、といった推測も出ているようです。

(追記)
このブログの投稿後、Side Effectsから正式にHoudini Indieの発表がありました。これはどうもこれまでApprenticeと呼ばれていたNon Commercialのラーニング・エディションをインディペンドのアーティストや小規模のプロダクションに限ってコマーシャル目的で使える、と変更しただけの模様です。Apprentice同様ファイル・フォーマットはコマーシャル版と異なり、レンダリングサイズもHDに限定されています。

Clarisse iFX 2.0

これは2D/3D統合型レンダリング・ツールというふれこみですが、ルックデブ、ライティング、そしてレンダリングとコンポジットが統合されたパッケージになっているソフトウェアで、あえて挙げるとすればThe FoundryのKatanaの競合製品と言えるでしょうか。特徴的なのは、レンンダラがCPUベースであるにも関わらず非常に高速であるという事です。VFX業界で生み出された標準技術、OpenColorIOやOpen VDBなどを積極的に取り入れており、すでにILMやDNegなどの大手スタジオが利用、もしくは利用を検討しているようです。開発元のIsotropixはSIGGRAPHにおいて今年の末に発売予定のClarisse iFX 2.0を発表するようです。

Unified Particle Physics for Real-Time Applications

これはテクニカル・ペーパー(8月14日、午前10時45分より)ですが、Nvidiaの研究者たちによる物理シミュレーションをリアルタイム計算するアプリケーションについてのもので、デモンストレーションのビデオがVimeoに上がっています。
この他にもSIGGRAPHで発表されるペーパーの全ての最初の1ページ目を公式ホームページからPDFでダウンロードできるので、参加される方は事前にチェックすると良いでしょう。またYouTubeでもSIGGRAPHのチャンネルでペーパーのプレビューがアップされています。


ADAPT Q&A

これまでこのブログで何度かに渡ってVFX業界の補助金制度のお話をしてきましたが、この補助金制度に反対し、アーティストの労働環境を改善するために組織された新しい団体ADAPTがSIGGRAPHにおいてQ&A形式のミーティング開くようです。ADAPTはやはり補助金制度のブログの中で何度か触れた、ブロガーのVFX Soldierが中心になって組織されたもので、現在資金を確保するための募金を募りながら、団体の趣旨を説明して回る活動を行っています。日本の多くの皆さんには関係のないお話かもしれませんが、海外でCG屋として活動したいと考えておられる向きには、今ハリウッド映画のVFX産業に置いて何が起っているのかを知る良い機会ではないかと思います。

Vancouver

私はバンクーバーには2011年のSIGGRAPHの時に初めて訪れているんですが、LAからですと飛行機で3時間くらいで、時差もないため割と気軽に訪れる事が出来ます。とはいえさすがに日帰りはつらいので(私の知り合いで日帰りを決行した猛者もいましたが)ダウンタウンにホテルをとって3、4日ほど滞在しましたが、LAと違って物理的な広さはあまりないので、その期間でも十分いろんなところを見て回る事が出来ます。街の雰囲気は世界の住みやすい街ベスト10の上位に常に食い込むだけあって、安全で落ち着いた雰囲気です。海沿いに高層コンドミニアムが立ち並ぶ様子がかつて私が住んでいたホノルルをちょっとだけ思い起こさせたのを覚えています。ダウンタウンの入り江に架かる橋の下にはGranville Islandという小さな島があり、ショッピングを楽しむのに最適です。また、ダウンタウンの北にはStanley Parkという公園があり、散策したり、園内にあるバンクーバー水族館を見たりすることができます。歩いても回れますが、レンタルの自転車を借りるのが一番楽でしょう。日程に余裕のある方は、ぜひバンクーバーの街も楽しんできてください。海外のVFX業界レポートで定評のある鍋潤太郎氏がPRONEWSにバンクーバーの見所を紹介しているので、そちらもご覧になってみてください。


4 件のコメント:

  1. はじめまして
    突然すみません
    私はVFXに興味があって、VFXを海外で学びたいと思っている学生です。
    現在は、イギリスで英語の勉強をしています。
    そこで、質問があるのですが、
    VFXを学ぶなら、アメリカ、カナダ、イギリスのどの国がいいでしょうか?
    今、イギリスに住んでいるので、イギリスでそのまま学びたい気持ちもありますが、映画といったらアメリカ、また、カナダも最近VFXに力を入れているようで...
    木村さんの意見を聞かせていただけないでしょうか?

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    1. ご存知の通り、イギリスにはDouble NegativeやFramestore、MPCなど著名なVFXスタジオがあり、多くのハリウッド映画のVFXが制作されています。カナダも盛んですが、今はこの2つの国が競い合っている状況で、どちらがどちらより劣る、というものではありません。私の知り合いも何人かLAで仕事を見つけられずに、結局イギリスに渡った者がいます。今イギリスにいて特に他に出る理由がないのであれば、そのままそこでVFXを学ぶのが良いのではないでしょうか。

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    2. 突然のコメントにも関わらず、すぐにお返事をいただき、大変助かります。
      貴重なご意見ありがとうございました
      身近に詳しい人がいないのでとても参考になりました。学校のことなども調べてじっくり考えたいと思います。オススメの学校など、もし知っていたら教えていただけるとありがたいです。
      これからの更新も楽しみにしています。
      ありがとうございました。

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