ハリウッドVFX業界就職の手引き

ハリウッドVFX業界就職の手引き
鍋潤太郎氏による、海外のVFX業界で働くための手引き。お薦めです。

2014年12月19日金曜日

業界ニュースを読んでみる ソニーハッキング続報

木村でございます。前回Sony Pictures Entertainment (SPE) のハッキングに関してお伝えしましたが、その後新たな情報が入りましたので、それをお伝えしたいと思います。

前回個人情報の漏洩に関してSPEから特に連絡はないとお話ししましたが、その後連絡があり、実際に盗まれた情報の詳細がわかりました。氏名、住所、ソーシャル・セキュリティ・ナンバー、ドライバーズ・ライセンス、パスポートの情報は全て漏れている可能性があるそうです(゚∀゚) 給料をダイレクト・デモポジットするよう手続きした場合は銀行のアカウント情報も、健康保険に加入した際に提供した個人情報(健康状態や既往症の有無)なども漏れている可能性があるそうです。つまりほとんど全てですね。またSPEでは情報が漏れた現、及び元社員に対してAllClearという個人情報のセキュリティ会社へのプランを12ヶ月分無料で提供するそうです。少なくとも過去5年以内1999年以降にSPEで働かれた経験のある方は、連絡を受け取っていなくともSPEにコンタクトを取ってみる事をお勧めします。


ところで、SPEは最終的に今回の事件の引き金になったと見られるコメディ映画"The Interview"のお蔵入りを正式に決めたようです。

Sony Cancels Release of 'The Interview'

劇場での公開はもちろん、ブルーレイやビデオ・オン・デマンドなどでの公開もしない、としています。日本では今回のソニーのハッキングがどの程度報じられているのかわかりませんが、アメリカではオバマ大統領がキューバとの国交改善に動き出したという、結構なビッグニュースをも差し置いて連日トップの扱いです。特にソニーがこの映画の公開をキャンセルした事が報じられてからは、エンターテインメント業界だけでなく政界や経済界も巻き込んでの一大論争となっています。アメリカ人がこの問題に敏感になっている最大の理由の1つに、今回のハッキングが北朝鮮によって主導された、と考えられている事で、実際アメリカの捜査当局はほぼ北朝鮮の仕業であることを断定したようです。

U.S. Officials Determine North Korea Is Behind Sony Hack: Reports

アメリカでは今回ソニーが映画の公開を取りやめた事で、北朝鮮とのサイバー戦争に負けた、という受け止め方をする人が少なくないようです。戦争というと大げさに聞こえるかもしれませんが、アメリカ人にとってはハッカーの挑発行為は、自分たちが自国で表現の自由を行使できない、という重大な脅威であり、とりわけハッカーが声明文の中で9/11を示唆するような文言を含めていたことに恐怖を感じた人も多いようです。元下院議長で最近政界を引退した共和党のニュート・ギングリッチは今回の一件を"damn close to a war"(戦争行為に限りなく近い)とまで表現しています。また、公開を取りやめたソニーと劇場関係者に対して、「臆病者」となじる人達もいるようです。私個人的には、観客やスタッフの身の安全を考えれば、会社のトップとしてある意味仕方のない判断であり、「臆病者」とはいささか単純な考え方だと思いますが、それとは別にもう1つ面白いレポートがあります。

Forget the politics, Sony executives say North Korea comedy 'desperately unfunny'

このレポートによると、"The Intervew"は失敗作であり、公開すればかえって大きな損害を被るだろう、と考えていたソニーの関係者がいたとの事です。SPEでは映画の世界公開に先駆けて、世界中の支社のエグゼクティブから意見を募ったようですが、これがリークされた模様で、イギリス支社の関係者はThe Interviewを"desperately unfunny and repetitive,"(どうしようもなくつまらなくて単調)であると表現しています。この関係者はとりわけ主演のジェームズ・フランコが気に入らないらしく、「(彼の演技は)イライラさせられるだけで、他の役者にやらせた方がよっぽどよかった」とこき下ろしています。フランス支社のエグゼクティブは共演者で共同監督のセス・ローゲンの冗談が「さっぱり意味が分からない」と評しています。他の国の関係者も軒並み低調な反応を見せる中、オーストラリア支社のエグゼクティブだけが唯一「楽しめた」とし、公開する時はフランコにプロモーション・ツアーを率いてきてほしい、と前向きな意見を寄せているのに対し、前出のイギリス支社は「ツアーをやるんだったら、我々の希望は誰も連れてこないでほしい、だ」とにべもない返事です。ただ、実際にこの意見を元に公開を取りやめたのかどうかはかなり疑問です。これだけ話題になっている訳ですから、見てみたい、と思う観客も少なくないでしょうから(実際私も興味がなかったのですが、今は見てみたいです)、やはり安全策を取ったと考える方が自然でしょう。

また、ハッキングされリークされた情報の中で、今回新たにSony Pictures Animationに関するものがメディアによって報じられています。

Sony Emails Reveal Failed Efforts to Recruit ‘Lego’ Directors to Run Animation Unit

この報道によると、低調なアニメーション部門を再構築するため、SPEのエグゼクティブが"Cloudy with a chance of meatballs"の監督だったPhil LordとChris Millerに、同部門のクリエイティブ面でのトップに就任する事を要請した事があったそうです。しかし、これに対して彼らは「モラルの低さを理由に」よい仕事が出来ない、と断ってきたそうです。当時SPAのCEOだったHannah Minghellaのメールによると、両者は「スタジオをバンクーバーに移した事で、LAを拠点にしていた才能のあるアーティストを失った」「スタジオの評判が優秀な人材の確保の障害になっている」「アーティストは皆自分たちが使い捨てのように扱われていると感じている」などといった例を挙げたそうです。これはSPEのエグゼクティブにとっては意外な返事だったようで、会長のMichael Lyntonは(Animation及びImageworksを監督していたSony Pictures Digitalの社長の)Bob Osherを首にすべきだった、と答えたのに対し、共同会長のAmy Pascalは「彼はすばらしいコスト・セービングの手腕を見せた」と擁護しています。

Varietyの記事は最後に、SPEのトップ達はここ近年VFX業界で起っていた出来事、ニュースや公の場での抗議活動、組合を作る運動などに、なぜかほとんど気づいていなかったようだ、と結んでいます。

<12月26日追記>

1999年までSony Pictures Imageworksで働いていた知り合いから連絡があり、彼の情報も漏れていたそうです。ですので、少なくともこの年以降SPEおよびその関連会社で働かれていた方は、SPEに連絡を取ってみることをお勧めします。

<12月23日追記>

その後SPEは方針を転換し、The Interviewを限られた数の映画館でクリスマスに公開することを決めたそうです(公開する劇場のリストはこのリンクにあります)。また、最新の報道は、SPEのハッキングには内部の者が犯行に関わった可能性がある、と報じています。

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