ハリウッドVFX業界就職の手引き

ハリウッドVFX業界就職の手引き
鍋潤太郎氏による、海外のVFX業界で働くための手引き。お薦めです。

2015年4月29日水曜日

外国人を雇ってみる その3

相当久しぶりになっていましましたが、木村でございます。以前もこのブログでお話ししましたが、今長期出張で日本に来ておりまして、その仕事で忙殺されてなかなか筆をとる時間がなかったのですが、なんとか滑り込みで4月無更新を免れました。しかしもうゴールデンウィークなんですね。現在関わっている仕事はクライアントから口外しないよう言い渡されていますので詳細はお話しできないんですが、時期が来ましたらこのブログでもご紹介したいと思います。

人間関係がうまくいかない

では前回からだいぶ間があいてしまった「外国人を雇ってみる」の3回目ですが、今回は人間関係に関してお話ししたいと思います。外国人を雇うと、最初は物珍しさから話が弾んでうまく行きそうな気になりますが、文化的な違いが人間関係の亀裂にまで至る事があります。例えば日本では上司が部下にきついことを言って相手に反省や発奮を促す、などという事がありますが、これをアメリカでやると最悪の場合パワハラで訴えられます。私はこれまでいくつかのアメリカのプロダクションでいろんなスーパーバイザーやディレクターのもとで仕事をしてきましたが、彼らからあからさまに怒られたのは、8年間で1度きりです。その1度というのも、私が相手の言う英語をうまく聞き取れずに、出ていたリテイクに全く手を付けないままショットをレビューに送り続けたため、最後についに堪忍袋の緒が切れた、という感じですからこれは到底相手を責められません。

怒られるのをいやがるとは甘えだ、と思う方もいるかもしれませんが、怒る事と相手を律する事とは意味が違います。アメリカでは上司と部下の関係は、あくまで会社という組織の中で共通の目的を達成するための便宜上の関係であり、これをもって相手の人間的な資質にまで口出しをするのは行き過ぎた行為だと見なされます。もちろんこの原則が常に守られているという事ではなく、実際にやな上司や行き過ぎた言動というのはよくありますが、少なくともこのVFX業界においてはそれほど見かけません。これは自分の部下が単なるオフィス・ワーカーではなくアーティストだ、という事を留意している人が多いからでしょう。また、アメリカでは仕事ぶりがよくない場合は社員であっても首にしますから、ネガティブな人間関係が長く続く事がない、というのもあるかもしれません。その点で言うと、私は日本の正社員制度はある意味かわいそうな制度だという気がします。仕事の出来ない部下がいるのに、簡単には首に出来ないのでジクジク言葉でいじめて本人からやめるようしむけたり、別室に閉じ込めたり、などというのはどちらにとっても精神衛生上よくないでしょうし、部下にとってももっと自分にあった他の仕事を探す努力をするきっかけを失っているとも言えます。

また、コミュニケーションがうまくとれない事が人間関係を悪化させるケースもあります。前回お話ししたハワイのスタジオでは実際にこれが発生しました。元々の要因はいろいろあったのですが、我々日本人同士が固まって日本語で話していると、アメリカ人スタッフが何か隠し事をしているのではないか、と疑心暗鬼になったのです。最終的にはこの亀裂はかなり深刻なところまで行き、もはや修復している時間がないと判断したマネージメントがチームを日本人のみとアメリカ人(やそれ以外の人々)のチームに分けて作業させたほどです。先ほどのコミュニケーションに関する話題のところで、私がなるべく通訳ではなく直接話す事を勧めたのも、こうした亀裂を未然に防ぐには、アーティスト同士が直接コミュニケーションをとる事が重要である事がこの時身にしみたからです。

次回は彼ら外国人CG屋自身の問題についてお話ししたいと思います。

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