ハリウッドVFX業界就職の手引き

ハリウッドVFX業界就職の手引き
鍋潤太郎氏による、海外のVFX業界で働くための手引き。お薦めです。

2015年5月24日日曜日

外国人を雇ってみる その4

木村でございます。「外国人を雇ってみる」と題した連載の4回目です。前回お話しした通り、これまでとは逆で、雇われる側の問題点をお話ししていきたいと思います。

思ったほど使えない


残念ながらこれは割とよく聞くケースです。数々のハリウッド映画への制作参加や一流のVFXプロダクションを渡り歩いてきた経歴を見て、これはすごい人だ、と思って雇ってみたら、全然使えなかった、というケースです。このケースは、私が考えるに主に2つのパターンがあります。

まず1つが、実際に実力がない、という場合です。実力がないのに大手VFXスタジオに雇われたり、ハリウッドのビッグ・バジェット映画の製作に関われたりするのは不思議に感じますが、これは主に人柄がいいとか、人付き合いがうまいとかで、いろんなスタジオの人達と人間関係が繋がっていて、それで雇われているケースです。VFX業界は狭い業界であり、人間関係やコネは非常に大事ですから、こういう部分が強い人達は、実際実力がそれほどなくても(もちろん全くないわけではありません)うまくやっていけるのです。また、VFXスタジオのVFXスーパーバイザーの中にはアーティストやTDではなく、コーディネーターやプロダクション・マネージャーの中からこうしたポジションについた人がいます。こうした人達ももちろん現場からの叩き上げですから、どうやってVFXを作ってくのか、どういう風に現場を仕切ればいいのか、という事はわかっていますが、実際にコンピュータを与えてMayaやHoudiniを使ってみろ、といっても恐らく満足な仕事は出来ないでしょう。

もう1つの理由は日本で必要とされる人材にフィットしないパターンです。ハリウッドのビッグ・バジェット映画の製作に関わっているアーティストは、多くの場合専門が細かく分かれており、日本のようにジェネラリストが何でもこなしてしまうような環境では多くの場合思ったような仕事ぶりを発揮してくれません。彼らの多くは、非常にパイプラインのしっかりしたスタジオで、特定の分野に集中して作業すると高度なテクニックやセンスを発揮しますが、それ以外はからっきし駄目だ、ということがよくあります。最近はVFX業界も人件費を削減するために、幾つかの仕事を兼業できるようなアーティストが重宝がられる傾向にありますが、それでも基本的には各プロフェッションに分かれて作業するのが基本となっています。私がハワイにいた頃、雇ったリード・コンポジターが「マスクきりやロトは他のアーティストがやってくれるんじゃないのか」と言っているのを聞いて、「何言ってるんだ、コンポジターなんだからそのくらい自分でやれ」と思った事がありますが、ハリウッド映画のVFXにおいてはロトやマスクきりなどはジュニア・クラスのアーティストや下請けがやる仕事であり、彼の苦情はこの業界ではもっともな事なのです。この点を理解せずに雇ってしまうと、全然使えなかった、というパターンに陥ります。これはどちらがいい、という事ではなく、目指している作品の規模やスタジオの環境が違うところからきている訳ですから、この点は理解しておいた方がいいでしょう。この辺は我々アメリカでやっているCG屋も、自戒を込める意味で肝に銘じておかなければならない事です。長年こちらで各分野の専業アーティストとして働いているうちに、すっかりそれ以外のスキルが後退してしまい、日本での需要にフィットしなくなってきているところがあります。アメリカ在住の日本人CG屋の中には、帰国して日本のプロダクションの要職に就きたがっている人もいますが、ハリウッド映画の製作に関わっただけで、日本のプロダクションにありがたがって使ってもらえるなどとは今後は考えない方がいいでしょう。

ではどうやればこうしたアーティストを雇わずにすむか、という事ですが、残念ながらあまり効果的な方法はありません。専門以外にこういう事が出来るか、と面接のときに聞いても、仕事欲しさから簡単に嘘をつく人も少なくありません。もしジェネラリストが必要な場合は、最初からジェネラリストとして売り込んでいるアーティストを雇う方がいいでしょう。その際はデモリールを一緒に見ながら、どんな作業をしたかを1つ1つ確認していくのがいいと思います。特定の専門分野をこなすアーティストを捜す場合は、この辺はもう少しわかりやすくなりますし、探しやすいです。その場合でも、デモリールのチェック等は欠かさないようにしましょう。人づてで良い人がいる、と紹介されて、デモリールのチェックもせずに雇ったら使えなかった、というパターンも実際にありました。

次回は外国人を雇ってみる意味について考えたいと思います。

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