ハリウッドVFX業界就職の手引き

ハリウッドVFX業界就職の手引き
鍋潤太郎氏による、海外のVFX業界で働くための手引き。お薦めです。

2015年7月20日月曜日

英語を勉強し直してみる その1

木村でございます。今回から何回かに分けて、英語のお話をしたいと思います。「アメリカでCG屋をやってみる」と題したブログを書き始めた頃から、この件に触れないわけにはいかないだろうと、いろいろ原稿を書いては捨て、書いては捨てを繰り返してきたのですが、どうもしっくりくる答えが今だに出ません。私のことを個人的にご存知(特にアメリカで)の方であれば、私が人様に教授できるような英語力を持ってはいないことはお分かりかと思います。まれに悪くない、と言ってくれる方もいますが、そういう方は(お世辞を抜けば)私の英語の主にテクニカルな面、発音だとか文法といった面に目を向けてそう言っておられるのだと思います。しかし今回恥を忍んで英語のお話をするのは、私自身、問題はそれだけでなくもっとコミュニケーションの根幹に関わる部分、新しいことに挑む時のメンタル面だとか、他人とどう向き合うか、とかいった一般に「英語力」と言われているものとは別のところにあるような気がするからです。そういったことも含めて、このシリーズでは英語が不得意な人がどうやって英語を勉強するか、ということについて私の経験をもとに書いていきたいと思います。


住んでいるだけではどうにもならない

最近はアメリカ以外の国が台頭してきたおかげで、LAでVFXやCGの仕事を探したいと日本から来るCG屋はあまりいなくなってしまいましたが、一昔前はSIGGRAPHなどで日本から来られた方と飲み会になると、大体自分もLAでCGの仕事に関わりたい、などという話になったものです。そういう時LA在住の日本人CG屋連中は「大丈夫だ、英語が心配でもこっちに来ればなんとかなる、とにかくまず行動を起こせ」などと発破をかけたものです。この「来ればなんとかなる」という考え方は実際のところ正しいものでしょうか。これはあながち間違いではないのです。そもそも、英語が完璧に喋れるようになるまで待っていたら、よほど英語力に自信のある人は別として、いつまでたっても日本を離れることなどできないでしょう。それよりも、ある程度時間を区切って集中して勉強し、時が来たら不安はあってもとにかく行動を起こさないと、いつまでたっても夢の実現などおぼつきませんから、そういう意味において彼らは「なんとかなる」と言っているわけで、実際その通りだと私も思います。では、純粋に英語力という観点において、住んでいればなんとかなっていくものでしょうか。私の経験ではそれはない、というのが結論です。

住むことによって、もちろん経験値は上がっていきます。そういう意味からすると、住んでいることが英語力の改善に無貢献というわけではありません。しかし、英語というのはあるレベルに到達すると、これはもう語彙力がものを言います。つまり、言葉を知っていなければ会話を続けること自体が難しいわけです。そして会話をする上で最も重要なことは恐らく、自分が何を言えるか、ということよりも相手の言うことをどれだけ理解できるか、ということでしょう。相手の言うことが理解できて初めて、それに対してイエス・ノーを返すのか、自分の考えを言うのか、それとも与えられた幾つかのオプションの中から何かを選ぶのか、といった「正しい返し」をすることができるわけです。これができなければただ自分の考えを一方的に相手に喋っておしまいになってしまいますから、会話として成立しません。この時、相手の言うことを理解するためには、言葉の意味がわからなければ話にならなりませんから、語彙を増やすことは言語の習得に必須なわけです。そして私が思うに、我々日本人はここで不必要なハンデを負わされています。

英語と和製英語

日本でしか通じない英語、すなわち和製英語がどのくらいあるか皆さんご存知でしょうか。実は私はどのくらいあるか知らないんですが、これがかなり英語の勉強の足を引っ張っていることは確かです。もうかれこれ10年以上前、私は日本人の知り合いと、アメリカのホテルで朝食を取りに行ったことがあるのですが、この知り合いが、前日出ていた朝食のビュッフェがその日見当たらなかったのに気づき、やってきたウェイターに「Viking?(バイキング?)」と聞いたのです。昔とあるテレビ番組で見た記憶があるのですが、ビュッフェに「バイキング」という言葉を最初に当てたのは、とあるホテルのレストランの支配人だか責任者だったかだそうです。その人は日本で初めてとなる食べ放題のサービスを、なんとか人々に印象付けられる名前はないか、と考えあぐねていたところ、たまたま見た映画で、北欧のバイキングがテーブルに盛り付けられた料理を豪快に頬張っているのを見て、これがいい、と名付けたのだそうです。このように、和製英語には企業やメディアが商売目的で本来の意味を完全に無視し、勝手に名付けてしまったものが定着した、というものが少なくありません。

和製英語の中でも、「ホッチキス」や「クラクション」など、そもそも英語には存在しない言葉はまだ害がない方です。なぜなら、存在しないわけですから相手も理解できないわけで、そのぶん「誤解される」可能性が少ないからです。その一方、「マンション(mansion)」や「コンセント(consent)」、「クレーム(claim)」、「ハーフ(half)」、「ツーショット(two shot)」などは、実際に英語としても存在するのに、日本での使われ方が全く異なるため、意味が違って受け取られる可能性が高いものがあります。これは最近私の日本のクライアントが、海外の取引先とのやりとりの中で注意する言葉としてあげたものに出てきたのですが、「フィックス(fix)」という言葉があります。日本の映像業界ではこれを「ディレクターの承認が下りた」とか「最終」といった意味で使われることが多いようですが、英語では「修正する」という意味になるため、全く話が逆になってしまいます(ちなみに英語ではapprovedがよく使われます)。

ではこうした間違った英語を海外で使わないようにするにはどうすればいいでしょうか。私が思うに、日本でよく使われているカタカナ言葉はまず必ず一度は疑ってかかるということです。最近はメディアや企業が勝手に英語の意味をでっち上げるケースは少なくなりましたが、そもそも発音が正しくなかったり、ドイツ語やポルトガル語など、他の言語が元になっているものもあり、信用できません。勉強した覚えもないカタカナ言葉が口をついて出そうになったら、まず辞書で確認することをお勧めします。

次回はなぜ「スカーレット・ジョハンソン」なのか、というお話をしたいと思います。



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