ハリウッドVFX業界就職の手引き

ハリウッドVFX業界就職の手引き
鍋潤太郎氏による、海外のVFX業界で働くための手引き。お薦めです。

2016年11月9日水曜日

大統領選挙とFramestoreの買収

木村でございます。ほぼ3ヶ月ぶりの更新になっちまいましたが、みなさんお元気でしたでしょうか。私アメリカに戻ってからは、しばらく以前働いていたThe Millという会社で、Lexusコマーシャルを作っておりました。


ルック・デベロップメントとライティングなんですが、自動車の外側と内側、人間の脳のニューロンのショットなどやらせてもらいました。ちょっと一瞬で分かりづらいかと思いますが、YouTubeのビデオがありますので、よろしければご覧ください。

しかし、今回ブログを更新しようと思ったのはこの話ではなく、アメリカの大統領選挙があったためです。すでに皆さんもご存知と思いますが、当初メディアで報じられていたヒラリー・クリントン優勢の事前予測を覆し、ドナルド・トランプが勝利し時期大統領となりました。このブログ、政治についてフォーカスしているわけではありませんし、私自身専門家でもありませんが、アメリカに住んでいる以上気になりましたので、これについて少々書いてみたいと思います。

トランプを支持した人々

日本の皆さんの中にもそう感じておられる方もいるかと思いますが、私にはこの人が大統領になる、ということがどうも釈然としません。人種差別的な暴言や女性に対する蔑視発言だけでなく虚言も多く、都合が悪いとすぐに相手を非難したり、訴訟沙汰をチラつかせたり、挙げ句の果てには小児性愛やレイプ疑惑まで出てきて、おおよそ国民のリーダーとなる人の人物像とはかけ離れた人です。

私が住んでいるカリフォルニアは中部の州などよりも人種構成が複雑でいわゆるリベラルな人たちが多く、私のアメリカ人の友人はほとんど大半がヒラリー・クリントンの支持者でしたので、結局のところ、私は本当の意味でマジョリティのアメリカ人のことを知らなかったのだと思います。そこで、一体どういう人たちがトランプを支持したのか、CNNが選挙の出口調査を実施した結果を報じていましたので、それをみてみたいと思います。

http://www.cnn.com/election/results/exit-polls

これは投票後に投票所を出てきた人たちに、任意でアンケートに答えてもらった結果ですので、必ずしも正しい結果とは言えないかもしれませんが、ある程度のヒントにはなるかと思います。

まず性別ですが、当然ながらクリントンには女性の支持者が多く、トランプには男性の支持者が多いです。しかし、トランプの女性支持者も42%いて、それなりに女性からも支持されていたことが伺えます。つまり、彼の女性蔑視発言はそれほどダメージにならなかったということです。この理由は次の年齢別の支持者を見れば何と無く想像がつきます。

クリントンは10代から40代の若年層に人気があり、逆にトランプは40代からそれ以上の年齢層に人気があります。アメリカも昔は今ほど男女平等ではなく、高齢の女性は女性に対する蔑視や差別的な待遇が当たり前の時代に生きてきて、トランプの言動がそれほど驚きに値しなかったのかもしれません。実際、アメリカのテレビのインタビューで、トランプの発言を「男なら誰でもするような発言」と、気にもとめていないかのようなことを言っておられる女性もいました。

次に人種ですが、これははっきりしていて、やはり白人以外のマイノリティはクリントン支持が多く、白人層はトランプの支持者が多いです。とりわけ非白人層の票をまとめると、70%以上がクリントンの支持です。逆に白人層では、女性でもトランプの支持者がクリントン支持者を上回っています。トランプはしばしばイスラム系の人々の入国禁止や、不法移民の取り締まりを訴えていますが、これが白人層に響いたということでしょう。

次に教育です。クリントンの支持層には大卒以上の学歴を持つ人々が多く、逆にトランプの支持層には高卒以下の学歴の人々が多いです。これだけ見ると、巷のメディアが報じていた「トランプの支持層は貧困にあえぐ無学なブルーカラーの白人達」という分析を裏付けているように見えます。しかし収入を見ると、こちらはむしろ高収入な人ほどトランプを支持しています。もちろんアンケートに自分の収入を正確に答えた人がどれだけいるかは不明ですが、やはり手厚い社会保障政策を推進する民主党に貧困層の支持が集まったと考えていいでしょう。

最後が支持政党やイデオロギーついてです。当たり前と言えば当たり前なのですが、圧倒的多数の民主党員がクリントンを支持しているのに対して、圧倒的多数の共和党員がトランプを支持しています。無党派層は支持が分裂しており、わずかにトランプが上回っています。トランプはいわゆる伝統的な共和党員とは異なり、政治家としての経歴もほとんどないことから、身内からの支持が薄いと考えられてきましたが、トランプが気に入らない、あるいはクリントンが女性だから、という理由だけで、民主党に寝返ったりする人はほとんどいなかったということでしょう。もちろん投票に行かなかったり、独立候補に投票した人もいたかもしれませんが、それがクリントンに有利に働くことはほとんどなかったということでしょう。

この出口調査の結果だけ見ると、今回の大統領選挙が例年のそれとそれほど大きくは違っていないことがわかります。今回も東西の両海岸沿いのリベラル層は民主党候補者を支持し、逆にそれ以外の地域は共和党を支持する、という形は変わっていません。ドナルド・トランプのキャラクターがあまりにも強烈なために、「幾ら何でもこれはないだろ」と思いがちですが、実際はそれほどではなかったということになります。

私が考えるに、これはやはりメディアの影響が大きいためだと思われます。先ほど話した、地域別の支持者を見てみましょう。

http://www.cnn.com/election/results/president

アメリカの全国ネットの大手メディアはその大半が西海岸、もしくは東海岸に集中しており、(FOXなどを除けば)多くのメディアはリベラル寄りです。したがって、トランプが何かをするたびに、それをセンセーショナルに取り上げます。カリフォルニアなどのリベラル地域に住んでいる我々や、外国メディアの多くはこれらの報道を毎日目にして生活していますから、実際のところ保守層が生活している地域で何が起こっているかを知る機会が少ないのです。選挙が終わり、トランプの優勢が伝えられるようになったあたりから、Facebookなどでは「カナダの移民局のサーバーが、移住を希望するアメリカ人が殺到したせいでダウンした」などと言ったニュースが共有されたりしていましたが、大統領選挙があるたび、保守派の勝利に我慢できないリベラル派が「カナダに移住する」などと言い出す話が度々出てきて、これも今更珍しい話でもありません。そして私のみたところ、それを実際に実行に移す人もほとんどいません(VFX業界は話が別ですが・・・)。

しかし、私が一番苦手なのがこのアメリカの保守層と言われている人たちの考え方です。国民皆保険制度のような社会保障を嫌い、銃を保有する自由を支持し、アメリカ的価値観に沿わない外国との関係を絶っていく。考えてみれば、この点においてはトランプはまさにぴったりな人と言えるのでしょう。

Framestoreが中国企業に買収される

ついでと言ってはなんですが、業界のニュースを1つ。イギリスのVFXハウス、Framestoreが中国企業に買収されることで合意したようです。

‘Harry Potter,’ ‘Gravity’ VFX Giant Framestore Agrees To $187M Chinese Takeover

最近では、レジェンダリー・ピクチャーズが中国企業に買収されており、中国からの攻勢がますます強まっていることに、懸念しているハリウッド関係者もいるようです。というのも、中国では映画作品に対する検閲が厳しく、今後ハリウッドで製作される映画にも、中国市場に合わせて内容を中国に都合のいいように改変する圧力が強まるのではないか、と考えている人たちがいるからです。

VFX業界でいうと、大手のVFXスタジオはそのほとんどが外国企業に買収されており、以前もお話ししましたように、Double Negativeが香港の、Digital Domainがインドの、MPCやThe Millはフランスの会社に買収されており、Sony Pictures Imageworksは一応日本企業の傘下ですから、自国の企業の支配下にあるのは、今ではDisney傘下のILMぐらいになってしまったのではないでしょうか。

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